2021年5月22日土曜日

5月19日、山田議長に申し入れ

 山田春男・広島市議会議長に対し、平和推進条例・政策立案検討会議のあり方を見直すよう申し入れました。



2021年5月19日

広島市議会議長 山田春男様

8・6ヒロシマ大行動実行委員会事務局長 宮原亮
広島市中区幟町14-3-705
86hiroshima.daikoudo@gmail.com


申入書


1)1000件を超える市民意見への冷淡な対応を今すぐに改めるべき
 ❶政策立案検討会議(以下、検討会議)代表は、4月になって「素案は全員が合意して作っており、修正や削除をする場合には全員の合意が必要だ」(4月16日、中国新聞記事より)と言いました。市議会がパブリックコメントを募集する際に、「検討会議の全員一致でなければ素案を変更しない」という基本方針を隠して募集したのは市民に対する背信行為ではないですか。後になって「すでに決まっていた」と言われても、市民は「意見を聞いたというアリバイ作りに利用された」としか思えません。
 ❷検討会議代表はまた、「素案作成前に専門家と平和団体にあらかじめコメントを得たから、再び意見を聞く必要はない」とも言っています。しかし、この種のものは専門家でもない市議会議員が作成するべきものではなく、本来は答申を行なうべき筋合いのものです。実際に出来上がった素案は、専門家と平和団体の意見を反映しているとは言い難く、つまみ食いして素案作成者の思惑を素案にしたに過ぎません。それ故に、専門家や平和団体からも極めて根本的な反対意見が出されているのです。
 ❶❷から、「素案について維持すると全員一致の決議がない場合には、該当の素案は削除する」が至当ではありませんか。


2)平和推進条例制定を急ぐ目的を明らかにすべき
 検討会議代表は条例制定の必要性を、(ⅰ)どのような市長が登場しても平和行政を行うことを義務付けるために、(ⅱ)予算的裏づけを法的に行う、と繰り返し説明されています。そして、市民からのパブリックコメントの採否にあたっては、この二つの目的を超えて「市長を拘束しないこと」を大きな基準に上げています。それ以上のことは「市長の裁量でできる」ことが理由にされています。
 全く語るに落ちるとはこのことです。従前から、「平和推進条例」のような代物がなくても市長は平和行政を行い、そのために必要な、他市に例を見ない額の予算を付けてきました。代表の言う条例制定の必要性と根拠は全く的外れです。しかも「被爆75年の節目での制定」も多くの市民意見によって断念せざるを得なかった今、条例制定を急ぐ理由は何なのでしょうか。
 結局、この条例で本当の目的とされているのは、6条2項で定めようとする「平和式典の厳粛化」であり、椋木議員の『アゴラ』への投稿(https://agora-web.jp/archives/2050301.html)が明瞭に述べているように、8月6日のデモを規制し、全ての集会とデモを禁止するための橋頭堡である、ということ以外に存在しません。もしそうでないというなら、検討会議の一員が、あたかも検討会議および市議会が上述の目的で条例を制定しようとしているかのような「誤解を与えている」投稿に関して、削除・訂正させ、市議会としてきっぱり否定しないのは何故ですか?


3)核戦争が切迫している時代に「反戦反核」を言わなくてどうするのか
 米・バイデン大統領は就任以降、中国を名指しで批判し「民主主義国家と専制主義国家との闘い」と公言し、4月の日米首脳会談では「台湾有事」に際し、日米が集団的自衛権を行使することを事実上宣言しました。すでに対中戦争を想定して在日米軍や自衛隊は強化されており、東アジアで、沖縄や岩国はじめ住民が核戦争に巻き込まれる可能性を高めています。こうした時代に「8月6日には全ての集会とデモを禁止する!」とは、とんでもないことです。1950年8月6日に、平和協会が平和式典を中止し、「8月6日は反省と祈りの日」(奥田助役)と談話を出し、広島市警が「勅令311号違反」をかざして「朝鮮戦争反対」「朝鮮半島での核使用反対」の抗議行動に4名の逮捕投獄で弾圧した歴史を繰り返すというのでしょうか? 先日松井市長は、今年の平和式典もコロナを理由に昨年と同規模で縮小・規制すると言いました。この状況下で被爆者・遺族・市民の参加を制限する一方で、菅首相は招待するというのですか? 核兵器禁止条約批准を拒み、オリンピック開催にいまだにしがみついてコロナ感染を広げ、「河井事件」を引き起こした1億5千万円の資金提供について説明しない菅首相に、もっと激しくヒロシマから怒りの声を上げるときではありませんか? 一体誰のため、何のための平和式典なのか。怒りと疑念は強まる一方です。

 平和推進条例の目的が決して、反戦反核運動の弾圧のためではないと言うならば、もっと真摯にパブリックコメントで出された意見、とりわけ、①「平和憲法の趣旨に沿った内容で」、②「核兵器禁止条約発効のもとでのヒロシマの取り組みの方向性を明確にするものとして」、③「『黒い雨』訴訟勝利によって明らかになった内部被曝に関する、市民と学校での教育などについて」等々の議論を継続し、前文や関連条文につき素案の修正を行うよう検討会議を指導すべきです。検討会議を「辞任する」と表明された委員を慰留するのではなく、必要であれば代表・委員の入れ替え、検討会議の一旦解散などの措置も考慮すべき段階でしょう。被買収議員への対応の件とも併せて、市民の付託に応えんとする市議会の姿を示してほしいと思います。

 上記の3点について、2021年5月26日までに文書での回答を求めます。

以上