2024年1月31日水曜日

広島県・海田町でのミサイル避難訓練反対! 広島県庁に申し入れ

 




2月15日に広島県海田町で実施されようとしているミサイル避難訓練は戦争のために住民を動員していく訓練です。訓練実施に反対し、県庁危機管理課に申し入れを行いました。


2024年1月31日

広島県知事 湯崎 英彦 様

8・6ヒロシマ大行動実行委員会

事務局長 宮原 亮


広島県海田町でのミサイル避難訓練中止を求める申し入れ

 

 2月15日海田町にて実施されようとしている「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練」の実施中止を以下の理由から要請します。


(1)広島県危機管理課が1月17日付で発表した「令和5年度広島県国民保護訓練の実施について」という文書によれば、2月15日の訓練は「Y国が事前予告をしていた、気象衛星打ち上げを目的とした弾道ミサイル」に対する避難訓練とされています。Y国と言っていますが、誰が聞いても北朝鮮や中国のことを想定した訓練であることは明らかです。

 ミサイル避難訓練は北朝鮮や中国に対する敵意をあおり、戦争に住民を動員するためのものです。第二次大戦中に戦意高揚のために住民を動員して行われた竹ヤリ訓練と同じです。

 このような訓練が被爆地ヒロシマで実施されることを許すことはできません。「進め一億火の玉」のスローガンのもと、国民総動員のもとで行われた戦争の行き着いた結果がヒロシマ・ナガサキの原爆投下でした。「二度と過ちは繰り返しません」という誓いはこのような戦争を絶対に許さないということであったはずです。再び国家総動員の戦争に国民を動員することを目的としたミサイル避難訓練に絶対反対です。


(2)北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が弾道ミサイルを発射しているのは事実です。しかし、それを上回る核ミサイルを朝鮮半島に配備し、圧倒的な軍事力で北朝鮮や中国を威嚇しているのはアメリカ、日本の側です。

 米バイデン政権は2022年発表の国家安全保障戦略で「ロシアを抑え、中国を打ち負かす」と宣言しました。この戦略に沿って中国に対する侵略戦争の準備を進めています。東アジアに米軍をシフトさせ、沖縄・南西諸島で対中国の軍事演習を繰り返し、日本全土に核弾頭搭載可能な中距離ミサイル配備計画を進めています。

 岸田政権は、この米政府の対中国戦争に最大の同盟国として参戦を決断しています。2022年末の安保3文書の改定、防衛費の2倍化の決定、昨年末には殺傷武器の輸出にも踏み切りました。自衛隊は米軍や韓国軍と合同演習を繰り返しています。

 この中で、北朝鮮に対する軍事圧力もエスカレートしています。昨年7月には米原潜が42年ぶりに韓国に入港、10月には初の米日韓3カ国合同空中演習が行われ、核兵器搭載可能な米軍の戦略爆撃機B52が韓国軍の基地に初着陸しています。今年1月15日~17日にも米原子力空母はじめ日米韓の軍艦9隻が参加する合同演習が行われています。

 こうしたものすごい軍事重圧に対して北朝鮮は体制存亡をかけてミサイルの発射などで軍事的対抗を強めています。要するに、軍事的緊張関係を激化させているのはアメリカや日本の側なのです。

 こうした状況下で行われる「ミサイル避難訓練」とは何でしょうか? アメリカや日本が行っている戦争準備、軍事挑発は一切問題にせず、一方的に北朝鮮や中国の軍事的対抗だけを取り上げて不安と敵意をあおることにしかなりません。

 海田町には、自衛隊基地もあります。アメリカや日本が中国との戦争に踏み切り、中国軍や中国本土にミサイルなどで攻撃すれば、当然中国の側もミサイルを撃ち込んでくるでしょう。その場合米軍や自衛隊の基地が真っ先に狙われるのは当然のことです。

 このような事態になった時、机の下に隠れたり、身をかがめたりしても実際にはほとんど何の意味もありません。むしろ戦時においては「避難」が自衛隊や米軍の活動を優先させる口実になります。第二次大戦で国内唯一の地上戦となった沖縄戦では住民は軍隊によって邪魔者扱いされ、軍による集団自決の強制や住民虐殺さえ行われました。

 本当に住民を守るなら、岸田政権が進めている戦争国家化攻撃に反対し、広島から軍事基地を撤去することです。


(3)敵意をあおって住民を動員する手口は、1923年関東大震災の際に「朝鮮人が毒を投げこんだ」というデマを政府・軍部、警察が主導して流布し、自警団を組織し、朝鮮人・中国人大虐殺に手を染めた時と同じです。

 今回の訓練は2004年に制定された国民保護法に基づいて実施されようとしています。国民保護法では「国及び地方公共団体は、自主防災組織及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない」と記しています。同法の国会審議過程では自民党議員が「(戦時には)今まで自衛隊がやっていたことを警察や消防がやる。そして警察や消防がやっていたことを民間防衛組織がやるということにならなければ」と発言しています。「国民保護」の名で、訓練を装って、他国の民衆への敵意をあおり、それに民間組織として住民を動員しようとしています。このようなことに地方自治体が手を貸すことを許すことはできません。

 

(4)沖縄県辺野古での新基地建設のための埋め立て工事をめぐって、国が初めて県の事務を代執行し、工事を強行しています。さらに岸田政権は、地方自治法を改悪し、有事には自治体の権限をはく奪することさえ狙っています。

 「戦争を二度と繰り返すな」の誓いから、地方自治の本旨をうたう憲法・地方自治法が制定されました。広島県は被爆地ヒロシマの自治体として、県民の命と生活を守る立場から、ミサイル避難訓練を拒否し、実施を中止すべきです。政府による排外主義を扇動した戦争体制づくりに協力し、住民を戦争に動員することなどあってはなりません。


以上