私たちは、NAZEN(すべての原発いますぐなくそう全国会議)ヒロシマの仲間と一緒に、12月24日広島市役所を訪問。松井市長(原爆被害対策部援護課)に対して、ただちに「黒い雨」訴訟の控訴を取り下げるよう、また国の設置した検討会の結果を待たず、被爆者援護法にもとづいて「黒い雨」被爆者の全員に速やかに被爆者健康手帳を交付するよう求めました。
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広島市長 松井一實様
申し入れ書
2020年12月24日
被爆75周年8・6ヒロシマ大行動実行委員会
事務局長宮原亮
広島市中区幟町14-3-705
電話&FAX 082-221₋7631
1、申し入れの内容
「黒い雨」訴訟での控訴を取り下げ、84人に被爆者健康手帳を交付すること
私たちは8月25日に、「黒い雨」訴訟の控訴を取り下げるよう申し入れました。私たち以外にも各方面からの控訴取り下げの声が高まっているにもかかわらず、広島市は取り下げに応じておりません。11月18日に広島高裁で第一回控訴審が開かれ、裁判長は、来年2月17日の第二回目の公判で結審となる可能性もあると述べています。私たちは、11月7日に「原告による報告会」、12月13日には「黒い雨」に関する”科学的知見”について、「大瀧慈さん講演会」を開催しました。この中で、原告の方々の長年にわたる命をかけた国との闘いの苦労と、被ばくの実相を巡る最新の科学的知見について学びました。また、原告の訴えにまともに向き合わず、広島地裁の明確な判決にも従わず、「検討会」で時間稼ぎを行う日本政府への怒りが、より一層強くなっています。私たちは広島市に対し、国のでたらめな控訴にきっぱり異議を申し立て、直ちに控訴を取り下げ、原告84人に被爆者健康手帳を交付するよう、あらためて求めます。
2、理由
広島地裁の、原告全面勝利・画期的判決。これを覆すことは許されない。
●「黒い雨」の降雨域について 厚労省が「黒い雨」被爆地域の指定に使ってきた宇田降雨図を否定し、「降雨域は宇田雨域に止まるものではなく、より広範囲に降った事実を確実に認めることができる」と結論づけています。さらに、宇田降雨図より拡大した増田降雨図、大瀧降雨図を認めた上で、この降雨図に含まれない地域にも被爆者が存在することも考えるべきと述べていることは極めて重要です。
●「黒い雨」に放射能が含まれていたかについて、判決文は「黒い雨には放射性微粒子が含まれていたと認められる」と述べ、「外部被曝に加え内部被曝を想定できる。健康被害を生ずる可能性があることは十分首肯される」と述べていずれも認めました。
●原告の証言の評価について、判決文は、「原告らの供述は被告代理人の反対尋問を経てもその核心部分を信用できないとする事情は伺われず・・・陳述書の内容に不自然不合理な点はないことから、黒い雨に曝露したと認められる」と述べて、信用性があると結論づけています。
●現行制度の評価と改善について 判決文は、健康診断受診者証制度が44年間定着してきたことを踏まえて、その制度で認められた被爆者と同程度の「黒い雨」の曝露があれば、健康管理手当対象の疾病があるかどうかを判断すべきとして、法を改正しなくても被爆者健康手帳の交付が可能であることを示しています。
3、国の控訴と検討会の不当性
政府は、控訴の理由を「判決は十分な科学的知見に基づいているとは言えない」「長崎体験者制度の最高裁判決と違う」「最新技術で科学的に検討する」などと述べて、膨大な控訴理由書を提出しています。
しかし、判決では「これまで黒い雨地域が被爆地域に指定された際、放射線量などが問われたことはなく、被爆者の援護に関する認識を改めるべき根拠が生じたわけでもないのに、本訴訟においてのみことさらに重視するのは相当ではない」と退けています。今さら「最新技術で科学的に検討する」と言うのもおかしな事です。やれるのであれば、4 年間の第一審の中でやるべきだったのです。
また、国は「対象地域の拡大も視野に含めた」検討会を行うとして、11月16日に第一回目の会議が行われています。しかし、何も期待はできません。本当に「拡大を視野に」入れているのだとすれば、一旦84人に被爆者健康手帳を交付した上で検討会もやればいいのです。また、対象地域の拡大と言ってもこの線引きが新たな分断を生む可能性は大きいです。広島地裁判決は、増田・大瀧降雨図の外にも「黒い雨」の被害者がいると言っているのですから、政府がいう「対象地域の拡大」などは今更必要ないのです。むしろ中途半端な「拡大」は、新たな分断を生み出します。検討会は、広島市と広島県を控訴に引き入れる口実にしかすぎないペテンです。
以上