2024年8月21日
広島市長 松井一實 様
8・6ヒロシマ大行動実行委員会
〒730-0036広島市中区袋町5-4-302
事務局長 宮原 亮
電話&FAX 082-245-8410
抗議申し入れ
本年8月6日、私たち8・6ヒロシマ大行動実行委員会が呼び掛けた平和公園原爆ドーム前での反戦反核座り込み集会に対する、広島市公園条例に基づく過料5万円の支払い命令、及び同日行われた広島県警への排除要請は、反戦反核運動に対する不当な政治弾圧である。
この不当な弾圧に厳重に抗議し、以下申し入れる。
1、8月6日に原爆ドーム前で反戦反核を掲げて座り込みをすることはあらゆる意味で正義の行動であり、これを公権力によって取り締まることはあらゆる意味で不正義である。
7月28日の日米外務防衛閣僚会合(いわゆる2プラス2)において、「米国の核兵器と日本の通常兵器を組み合わせて」中国侵略戦争を行うための「拡大抑止協議」の初の閣僚級協議が行われた。このように実際に核戦争が切迫し、しかも、他ならぬ日本がその遂行者として登場しようとしている時、8月6日の原爆の日に市民が様々な手段で核戦争反対の声を上げるのは当然のことである。
またガザでの大虐殺が繰り返される中、その実行者であるイスラエル代表の招待に抗議の声を上げるのは当然のことである。
平和公園における座り込みは被爆者を中心に長年にわたって行われてきた核と戦争に反対する意思表示の手段であり、これを「条例違反」や「警察への排除要請」によって取り締まりの対象とすること自身、表現の自由への侵害であるとともに、ヒロシマの心である「絶対にヒロシマ・ナガサキの惨禍を誰の上にも繰り返させない」という思いと行動に敵対するものであり、絶対に許されないことである。
2、市が県警に排除要請したにもかかわらず県警が排除できなかったことに、広島市の退去命令、排除要請の不正義性が現れている
重要なことは、広島市が広島県警に対して排除要請を行なったにもかかわらず、県警は強制排除をすることができなかったということである。私たちは原爆ドーム前で予定通り座り込み集会を行い、8時15分の黙祷を平和公園内で行い、広島市職員や市委託のガードマン、機動隊などが封鎖していた原爆ドーム北側正面から整然と歩道に出て、堂々とデモに出発した。
県警が強制排除できなかったのは、広島市の要請があまりにも正当性がなく、あまりにも不正義であったからである。反戦反核の座り込みをこのような形で強制的に排除することを強行したならば、むしろ広範な市民の怒りに火を付けることを恐怖したからである。
3、イスラエル招待、立ち入り規制に現れた今回の式典のあり方は間違っており、だからこそ破綻した。今後一切このような規制をするべきではない。
イスラエル代表を招待するような記念式典への怒りと、今回の立ち入り規制によって、今年の平和記念式典参加者は例年に比して激減したと報道されている。
長崎の記念式典にはイスラエルが招待されなかったが、G7各国代表はそのことを理由として記念式典出席を拒否した。G7各国がイスラエルと完全に一体であり、ガザ大虐殺の共犯者であることを自己暴露した。このことによって、今回の広島の平和記念式典がイスラエルの虐殺を擁護しする「戦争式典」であったことがますます鮮明となった。
今回広島市が行った8月6日の平和公園立ち入り規制、平和記念式典へのイスラエル代表招待などの「平和記念式典のあり方」は完全に間違いであったと認めるべきである。
今回の規制を主導した市議会議員などは自身のウェブサイトなどで今回以上の「厳しい規制」の必要性を早くも主張している。広島市は今回の立ち入り規制の破綻を認め、8月6日の原爆ドーム前で反戦反核の声を上げることに対して、いかなる規制も行うべきではない。
4、退去命令に従わなかったから過料としているが、退去命令の根拠が示されていない
広島市は8月6日に発布した告知書において私たちの座り込みが「平和記念公園に居座り退去命令に従わないため」広島市公園条例第5条8項「公園の管理に支障があると認められる行為をすること」に違反していると主張して過料5万円の支払いを命じている。しかし、そもそも退去命令がどのような根拠で行われたのか、その退去命令にどのような正当性があるのか全く説明がされていない。
8月6日の当日、告知書を渡そうとする広島市緑政課小林課長に、当実行委員会はわざわざマイクを差し出して説明を求めたが、きちんとした説明はなされなかった。
何の合理的根拠もなく原爆ドーム周辺を「平和記念式典会場」と主張し、法的な根拠もなく勝手に立ち入り規制し、退去命令を行うということに何ら正当性はない。そのことを説明できない点に、この「過料支払命令の告知」について広島市自らがその正当性に確信を持てないことを自己暴露している。
5、「公園の管理に支障がある」としているが、支障をきたしたのはむしろ機動隊の規制
告知書の違反条項の条文には、「公園の管理に支障がある」とあるが、どのように支障があるのか全く説明がされていない。公園は自由使用が原則であり、公園利用者が公園内において座ったり集まったりするのは自由であり、プラカードや横断幕を持ち、ゼッケンなどを着用することも自由であり、もちろん戦争反対の声を上げることも自由である。
私たちが座り込みをしていた場所は広大な平和記念公園の敷地のごく一部であり、座り込み以外の場所を他の公園利用者が通行することに何の支障もなかった。実際に、市の職員、大勢のマスコミが私たちの座り込みの前を数時間にわたって右へ左へ自由に通行していた。むしろ通行を妨げ、市民の公園利用を妨害していたのは、広島市による手荷物検査ゲートの設置及び、広島県警機動隊による座り込み周辺の封鎖、通行規制であった。実際、手荷物検査を受け、ゲートを通過して原爆ドーム前に来た多くの市民が、座り込み周辺を取り囲む機動隊によって原爆ドーム前に近づくことができなかったと証言している。
6、市の発表した規制は逮捕の脅しで服従を強制し、警察力での強制排除ありきで準備されていた。絶対に許されない
8月6日朝4時30分頃から広島市は座り込みに対して「立ち退き要請」を行い、これに従わないとして5時40分頃広島県警に排除の要請を行なっている。
広島市は8月6日以前の私たちの申し入れや質問状に対する回答で、繰り返し、退去要請に従わない場合は「広島県警と連携して対応する」と回答しているが、具体的にどうするのかについては明らかにしないとの回答を繰り返した。
県警は、すでに朝4時頃からバスなどの車両10台あまりで原爆ドーム周辺に部隊展開を行っていた。広島市は拡声器を持ち込んで「立ち退き要請」を叫ぶだけで、立ち退き要請の根拠など何らまともな説明もせず、朝5時からと言われていた規制時間をわずか40分程度過ぎた段階で県警に排除要請をしている。
この経過を見ても明らかなように、市の行っている「退去要請」なるものがあらかじめ機動隊の暴力的排除を行うためのアリバイ的儀式でしかなかったことは明らかである。
また、昨年の原爆ドーム前集会に参加した5人の仲間が、半年以上経過した2月28日に「暴力行為等処罰法」違反のでっち上げで逮捕され、今も拘束されているが、この弾圧も広島市と県警が連携して行われているものである。今回の広島市と県警の集会弾圧策動を見れば明らかなように、2・28暴処法弾圧は逮捕の威嚇をもって8月6日原爆ドーム前集会をつぶそうとした政治的弾圧であることがより明確となった。
市民との対話を拒否し、一方的な命令と逮捕の脅しで従わせようとし、従わないものには警察権力の暴力で排除しようとした市の姿勢は絶対に許されない。厳重に抗議する。